2026年10月10日(土)、荻窪地域区民センター 第5・6集会室にて、NPO法人しゅわえもん「手話でひらく、学びの時間 ― 教養講座」の第1回を開催しました。
講座の様子
第1回のテーマは「ろう者学というメガネ 〜あたりまえを問い直す〜」。講師には、看護師として勤務した後、米国ギャローデット大学で特別学生・大学院生としてろう者学を学び、修士課程修了後は同大学の研究センターでろう者の医療に関する研究コーディネートに携わってこられた皆川 愛さんをお迎えしました。
講座のゴールは2つ。個別の出来事にとらわれず、その背後にある構造や考え方を見通す「視点(メガネ)」を手に入れること。そして、社会によって定義づけられてきた「ろう」の意味をとらえ直し、「当たり前」を解きほぐすことです。
ろう者学はどう生まれたか 前半では、ろう者学の成り立ちをたどりました。1960年代の米国では、公民権運動を背景に「大学で教えられる知識は白人・西洋中心ではないか」という問いから、当事者による黒人学が生まれました。1971年、全米ろう連盟のフレデリック・シュライバーは「黒人学やユダヤ人学があるのなら、なぜろう者学がないのか」と提言します。研究される対象としての「ろう者」から、ろう者自らが知識をつくり直す立場へ。その後、大学での講義や学位課程の設立を経て、ろう者学は学問として根づいていきました。
同じ出来事も、レンズによって見え方が違う 続いて、ろう者学の考え方が「医学・病理モデル」から「文化・言語モデル」、そして社会の構造や権力に目を向ける段階へと移り変わってきた流れを紹介。「ろう児が音声言語ではなく手話を使う」という一つの出来事も、医学のレンズでは「治療の対象」、文化のレンズでは「ろう者としてのアイデンティティと文化の継承」、ろう者学のレンズでは「手話が周縁化され、音声の獲得が求められる社会の仕組み」として見えてくることを、具体的に示していただきました。
3つの次元で「当たり前」を読み解く 後半では、カルチュラルスタディーズの考え方(文化とは「何が普通か」「何に価値があるか」を決める、日常に埋め込まれた意味と価値である)を手がかりに、思想(イデオロギー)・制度・個人という3つの次元から社会を分析する方法を学びました。アルチュセール、フーコー、グラムシといった思想家の理論にも触れながら、「声で話せる方がよい」という規範が、思想・制度・個人の意識にどのように根を張っているかを事例として読み解きました。最後には、参加者自身が身近な「当たり前」を取り上げ、3つの次元で分析するグループワークにも取り組みました。

哲学的な問いを含む、決してやさしくはない内容でしたが、当日は50名を超える方にご参加いただき、定員を上回るほどの盛況となりました。手話に関わる多くの方が、ろう者の視点から社会を学ぶことに強い関心を寄せていることを、あらためて実感する機会となりました。

学問として学ぶことの大切さをとても感じました。自分の事に近づけて分析をすることで、聴覚障害を持つ方の状況や背景など、より理解が深まったと思います。
今後も引き続き、自分が個人としてどう行動していくか、発言していくかを考え続けたいと思います。
良いきっかけをありがとうございました!(参加者の声)
第2回 参加者募集中
| テーマ | ろうあ界の灯 〜時代を照らした先人たち〜 |
| 講師 | 那須 英彰さん(俳優・NHK手話ニュースキャスター) |
| 日時 | 2026年12月6日(日)15:00〜17:00 |
| 会場 | 阿佐谷地域区民センター 第1・2集会室 |
| 定員 | 80名(先着順) |
| 参加費 | 1,000円(事前振込。お申し込み後に振込先をご案内します) |
| 情報保障 | 読み取り手話通訳つき |
| 対象 | スタッフ・一般(どなたでも) |
| 申込締切 | 2026年11月29日(日) |
| お申し込み | 申込フォーム |
那須さんは、俳優・NHK手話ニュースキャスターとして活躍され、一人芝居・二人芝居を中心に国内外で公演を重ねてこられました。2023年NHKドラマ「デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士」、2025年公開の映画「みんな、おしゃべり!」にもご出演されています。第2回では、ろうあ界の歴史を切り拓いてきた先人たちの歩みをたどります。
第1回に参加されていない方も、第2回からのご参加を歓迎します。参加したい回だけのお申し込みも可能です。
今後の予定
- 第3回:2027年2月7日(日)15:00〜17:00「手話とともに育つ 〜乳幼児期のろう教育のいま〜」
- 講師:戸田 康之さん(埼玉県立坂戸ろう学園 教諭)※11月下旬に募集のご案内をします
